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Report No.01

(5) 一ノ関〜青森(1998.8.7.)


433 一ノ関 512〜639 気仙沼 656〜846 前谷地

 目が覚めると、東北らしくのっぺりとして、それでいてなつかしさを感じるやわらかい風景が広がっていた。もっともこう感じるのは、私が基本的に東日本の人間で、関西方面の人間なら中国地方の赤茶けた風景になつかしさを憶えるかもしれない。

 のんきなことを言ってしまったが、時計を見ると一ノ関到着時刻寸前でどきりとする。だが、町に近づく風景ではないから、遅れているのだろう。ほどなく車掌がまわってきて、20分程度で着くという。それなら次の大船渡線の列車に間に合う。

 結局22分遅れて一ノ関に到着した。定時に到着されても40分近く待ち時間があって、暇を持て余しただろうから、これは吉とすべきだ。駅をいったん出て、いまや夏の風物詩となったライダーたちの駅ネを横目に駅前を観察して、すぐまた改札を入る。ホームにはすでに大船渡線の車両が入っている。ちょうどいい感じだ。

 車両の横にはドラゴンの絵が描かれていて、「ドラゴンレール大船渡線」と、ずばり書いてある。これは、途中東進していたはずが北側へぐるっと迂回する路線の形から、元来「ナベヅル線」とか言われていたこの線に愛称を与える際に募集したところ、大人は「ナベヅル」と言ったのに対し、子どもの場合は「ドラゴン」だったらしく、上記の名称に決定したからである。そういえばこの名前は某漫画のタイトルに似ている。こんな迂回路線になってしまったのは、一ノ関と気仙沼を直線で結んだ途中にある千厩と北側にある摺沢との政治的因果だとかで、越えるに越えれぬ山があるとかではない。

 東北の横断路線は数多いが、いくら数が多くても地形はどこも一緒で、従って景色はどこも似たものとなる。つまり眠くなる。朝早いというのが一番の要因であろうが、そういうことで、摺沢も千厩もうろ覚えのまま太平洋側に出てしまった。

 気仙沼駅でスポーツ新聞を購入。横浜ベイスターズは、14回、ローズのさよなら3ランで勝ち、この3連戦は全勝。実はこの3連戦のどれを見に行こうか大いに迷ったが、どれを見に行ってもそれなりのものを見られたようだ。独りでスポーツ新聞を見て待合室で喜ぶ姿はさぞかし地元民には奇異に映っただろう。

 さて、仙台から三陸沿いに三陸鉄道北の終点久慈まで、夏の間、「リアスシーライナー」という列車が運行されている。三陸沿いを制覇しようなどと思っている私のような人間には絶好の列車で、しかも「青春18きっぷ」を持っている乗客は是非乗りたいが、気仙沼を通るのは随分先である。ここに来たのはたまたま「八甲田」の最初の停車駅が一ノ関であったからで、その先は決めていなかった。そこで時刻表を繰ってみると気仙沼線に乗って前谷地までこの列車を迎えに行くことができることがわかった。気仙沼線往復という無駄足を踏むことになるが、この都合では致し方ない。しかし、前谷地というのは石巻線でしか来られない駅というのが常識で、石巻線に乗らずに気仙沼線に完乗したなんていうのは前代未聞ではなかろうか。

 気仙沼線小牛田行きは旧型気動車を3両もつないでいた。さすがに朝である。高校生はまだ少ないが、いずれ増えてくるであろう。実際、次の南気仙沼で結構乗ってきた。南気仙沼は気仙沼市の中心に近い。それから先も徐々に乗客を増やしてゆくが、志津川で一旦乗客は引き上げてしまう。気仙沼線は比較的新しい路線なので高架やトンネルが多く、この駅もイメージに合わない高架駅であった。そして、降りた量以上の乗客が車内に戻ってきて、再び発進し、そのまま乗客が降りることなく前谷地に到着した。

 前谷地で降りた人は結構多かったが、改札を出たのは私くらいであった。皆、石巻方面の列車に乗り換えてしまう。それもそのはずで、この駅は気仙沼線が石巻線から分岐しているという事以外、何もない駅である。こぢんまりした駅舎にこぢんまりした駅前。そこに車が一台づつやってくるところがすごい。一台分しか余裕がないが、きちんと二台はやって来ないのである。「日本一何のとりえもない乗換駅」の肩書きをあげたいくらいだが、こういうところもたまには良い。
前谷地 923〜1552 久慈

 さて、これから6時間もお付き合いすることになる「リアスシーライナー」は、定期列車の急行「南三陸1号」3両を連結した6両でやってきた。それでも車内は比較的混雑していて、ロングシート部分しか確保できなかった。宮古方面まで乗り通しそうな人も多いが、気仙沼で大方降りそうだ。少なくとも気仙沼まではさっき通ったばかりの区間なので、ロングシートでも我慢できる。

 乗車した三陸鉄道車両はセミクロスで、そのロング部分にはテーブルが備えられており、隣で子どもがお絵かきをしていたりして、一風変わった雰囲気を醸し出している。このテーブルが「リアスシーライナー」仕様なのかは知る由もないが、面白いサービスである。

 気仙沼で3両を切り離して身軽になる。先程来た駅であるが停車時間が長いので、今一度駅前に出て写真を撮るなど、やり残したことをしておく。ホームに戻っても時間が残っているのでタバコを吸ったり、珍しく車両の写真を撮ったりした。そしていよいよ本格的な観光列車が出発したのであった。

 第一弾。まだJRの区間であるのに、観光案内が始まった。しかもJRの車掌のものではなく、毎日担当の沿線自治体があるらしく、この日は宮古市の人が案内をしていた。おまけに案内が終わるとおみやげの「わかめ」(パックに入ったもの)と「いかせんべい」を配りに来た。乗客はかなり減っていたものの、全員に配っているから、サービス量が半端じゃない。しかも、ひとまわりした後、「わかめが余っておりますので欲しい方どうぞ」と、またまわってきたのであった。

 わかめはさすがに食えないので、いかせんべいをバリバリ食いながら過ごしていると、第二弾。陸前高田を過ぎ、今度は車両毎にクイズ大会が始まった。静かに過ごしたい人には迷惑な話だが、みな乗り気ではないもののまんざらでもない様子で参加していた。クイズは○×方式で、頭の上でその形を作ってください、というもの。宮古市に関する問題がメインだったが、私は三陸鉄道ができたのは何年であるとかいう問題でしくじった。よりによって鉄道問題で間違えるとは世も末である。それなりのショックを受けながら続きを聞くと、優勝者が決まり、宮古の実家に帰るという、もろに地元の人であった。景品が何だったのか非常に気になるところだ。

 大船渡市の中心であり、JRと三陸鉄道の接点である盛に到着する。なにやらホームにはただならぬ賑わいが漂っており、これが第三弾。ホームにははっぴを着た人たちが大挙していて、大船渡市からまたしてもわかめとパンフレット、そして地酒のプレゼントであった。私はアルコールといえばビールばかりなのだが(北海道人の血?)、日本酒をプレゼントされても受け取らないわけにはいかず、しかものんびり旅行中だから飲まないわけにも行かない。中年の人に混じって喜んで受け取ってしまい、おみやげにしようなどとはこれっぽっちも思わず、飲み始めてしまった。

 三陸鉄道に入ったら、さっそく車掌が切符を売りに来た。実は青春18きっぷを持っていれば三陸鉄道の運賃が半額になるのだが、果たして「青春18きっぷ リアスシーライナー 三陸鉄道利用券」なるものが補充券に混ざって用意されていた。後に久慈で回収されてしまい、残っていないのが残念だが、かなり恐るべしである。

 三陸鉄道の区間は、ただでさえ起伏の激しい地形の上、トンネル工法が確立した後の開通だから、トンネルと高架がやたら多い。だから一瞬の海というか湾が見られる区間の車窓に全身全霊を傾けて、あとは日本酒を嗜む、という単純な繰り返しが続き、三陸鉄道・南リアス線の終点であり、JRとの連絡駅である釜石に到着した。

 本来は乗換駅であるから駅前を観察できたりするのかも知れないが、この列車はタバコを吸う時間程度しか与えてくれず、むしろ3駅先の大槌の停車時間の方が長かった。ここでは駅の写真を撮ったり、暇そうな車掌と話をすることもできた。釜石は当然、後で釜石線に乗るときに再訪の余地があるから、私にはこの大槌でのひとときの方が貴重であった。

 宮古で、乗務(?)していた案内係が降り、再び長時間停車があった。そこでまた駅前に降り立ち、腹ごなしのたこ焼きを購入して車内に戻った。またここから三陸鉄道の区間に入り、その北リアス線の路線延長は南リアス線よりも圧倒的に長い。酒はまだまだ残っているので、旅の友には事欠かないが、ただでさえ良くなかった天気が徐々に悪くなってきた。そんなに海岸を望める線ではないが、やはり景色は良くないと面白くない。

 3つ先の田老までは国鉄宮古線として開通した区間であり、ずっと先の普代から先は国鉄久慈線として開通した区間である。従って田老から普代までが三陸鉄道によって初めて開業した区間であるが、田老の前後で雰囲気が変わったりすることはなかった。乗客は田老で一区切りがついたが、その先も同じ雰囲気の車窓と駅が続いていた。

 普代から先は若干雰囲気が変わった。駅が地平にあることも多くなり、海がそれほど見えるわけではないがトンネルも減った。野田玉川という駅を見て、大阪の野田に玉川という地下鉄の駅があるなとかくだらないことを考えながら、時を過ごした。

 乗客はどんどん減って、途中から乗った人よりむしろ気仙沼のあたりからずっと乗ってる人の方が目立つようになってきた。まさか私のように乗り通す人がいるとは思っていなかったから、二人以上いるだけで驚きだ。

 ついに雨が降り始めて、久慈に到着した。久慈駅は三陸鉄道とJRの駅舎が別になっていて、第三セクターではよくある方式だが、不便である。もっとも、おかげで私の切符を回収することができたのだろうし、両端がJRであるようなところでは不正をなくす意味でも、意義深いのかも知れない。
久慈 1631〜1833 八戸 1853〜2035 青森 2308〜

 久慈市は岩手県だが、JRは青森県方面にしかなく、三陸鉄道にしても盛岡まで行くには宮古で乗り換えねばならないから、バスが重宝されそうなところである。案の定、駅前には特急バス乗り場があった。近頃、地方都市へ行くと駅前には決まって県庁所在地へのバス、大きいところでは東京行きの高速バスが走っていたりすることが多くなった。

 次に乗る八戸線の車両は旧国鉄型の2両編成であった。ところで、この八戸線という名前、これでは八戸からどこに行くのかわからない。先程紹介した久慈線にしても宮古線にしても、なぜ起点の名前を付けたのかと思う。むしろこの線が久慈線であるべきだ。全国的に見てもとくに困惑するのがこの類の路線で、函館本線や片町線など、どこを走っているのか知っていなければわからない。

 時間帯のせいもあるだろうが、八戸に近づいていっているのにどんどん寂れていく。天気のせいもあるだろう。これはこれで情緒があるし、いつもこんなわけではないだろうが、私が青森県へ来ると決まって天気が悪く、またしても青森イコール寂しいのイメージがこびりついてしまった。それでも八戸市内に入ってからは車内も賑わいを取り戻し、市の中心である本八戸からは満員であった。この区間くらいはもっと本数があってもと思ったが、わずか2駅だからそれほど気合いを入れる気も起こらないのか。

 八戸に到着し、今日の未乗区間は終了した。八戸線の乗客はほとんどが盛岡方面の特急と普通に流れてしまい、青森行き普通に乗るのは少なかった。青森行きはすでに入線しており、新型ロングシート車両である上に立ち客も多かった。この車両は、この地区に多かった機関車が牽引する客車列車を置き換えるために導入されたもので、こんな地方なのにロングシートであるからさんざん批評を食らっている。私は朝夕通勤時の実態を知らないから偉そうなことは言えないが、JR西日本が大阪という大都市で、JR九州が福岡で転換クロスシートを導入できることを考えると、これは怠慢・・といっては失礼だが、サービスの向上の余地があるのではないかと思っている。

 三沢で座ることができ、寝てすごそうと思ったが、今日は不思議と眠くならない。こんなに何回も乗ったことがある路線で、しかもこんな夜中に、酒まで入っているのに目が冴えることもなかろうにと思うが、どうしようもない。青森まで、ぼんやりと時を過ごした。

 青森というのはどの線から入っても突然街が現れる。いきなり車窓が賑わうので、一気に都会に飛び込んだかの錯覚に陥るが、今日はさらに花火があがっている。何事かと考えてみると、今日は東北・北海道では七夕である。なるほどねぶた祭りだ。仙台でも七夕祭りをやっていたであろうし、何も考えていなかったが、都合のいい日に東北に飛び込んだものである。

 青森に到着し、駅をでるとものすごい人手であった。ちょうど終わりかけの時間らしく、電車に乗って帰ろうとする人も多い。青森はこうして北海道の行き帰りに何遍も立ち寄ったが、今日は雰囲気が違うので楽しい。どこで祭りをやっているかもわからないから、駅前を人混みにまぎれてぶらつくだけで終わったが、札幌行き急行「はまなす」までの長い待ち時間に花を添えた。

 ここで「北海道フリーきっぷ」を購入する。これは北海道内の特急・急行の指定席に乗り放題の切符で、7日間有効である。以前は迷わず内地から北海道ワイド周遊券を使ったが、今はもう周遊券はないし、新しく登場した周遊きっぷはたったの5日間有効で私のように長期滞在するものには不向きであり、なにより今回はフェリーで帰ることになっているから、周遊タイプの切符は諦めていた。しかし、今回の旅行では新たに登場した「スーパーおおぞら」には乗りたいし、昼間に乗ったことのない根室線新得〜釧路間、宗谷線旭川〜幌延間にも乗って、北海道制覇を完全なものにしたい。そこでスケジュールを勘案し、お盆前の方が後よりも多く時間を使えることがわかり、それなら北海道突入の際に使ってしまおうと考えたわけである。この切符は海峡線の特急・急行は使えないと記されていたが、乗車券としてはJR北海道との境界駅である中小国から有効だそうで、中小国までの乗車券と函館までの急行券も同時に購入した。

 まだ一時間以上あるがホームに降りた。各方面へねぶた祭りの臨時増発列車が発車する中、このホームは閑散としている。「はまなす」を待つ人は少なく、夏は結構混雑する列車であったから意外であった。今朝の「八甲田」にしても、この「はまなす」にしても、周遊券が廃止されるとここまで乗る人がいなくなるのかというのが率直な感想である。

 それでも発車時刻が近づくと徐々に人が集まってきた。特にこの列車は盛岡からの特急「はつかり」と大阪からの特急「白鳥」を受けるのでその列車が到着すると賑やかになるのだ。しかし、先に到着するはずの「白鳥」がやって来ず、「はつかり」が先に到着した。後ろに並んでいた人と話していると、秋田から北海道に行こうと思ったが、大雨で飛行機は飛ばず、鉄道も日本海側は不通で、仕方なく盛岡経由で来たらしい。というわけで、「はまなす」に乗り込んだ後、ほどなく「白鳥が一時間ほど遅れているので、発車時刻は12時頃になります」とのアナウンス。以前私が「白鳥」から「はまなす」へ乗り継ぐときも、集中豪雨で「白鳥」は遅れ、「はまなす」はそれを待っていた。どうも私と相性が悪いらしい。

 ホームに再び降りてみると、他の人たちも同様に暇そうにしている。やがて時間が近づくと「白鳥」の近づく音が聞こえてきた。以前遅れたときは臨時に「はまなす」の横のホームに入れる措置を執ったので、今回もそうであろうと思って待っていたが、全然違うホームに入ってきた。なぜ今回はサービスできないのか理解に苦しむ。何はともあれ48分遅れで青森を出発した。


完乗記録

JR東日本  大船渡線 気仙沼線 八戸線
三陸鉄道 北リアス線 南リアス線
以上全線

JR東日本 山田線 釜石-宮古間


[01 北海道旅行'98]
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(5) 8.7. 一ノ関〜青森 (11) 北海道旅行・その後